お腹の中の赤ちゃんに口唇口蓋裂があると発覚し、沢山悩み沢山泣いて決意した出産の時。あとは赤ちゃんの誕生を待つだけのはずが、、、、、 問題が発生しました。
出産時の出来事や心境のお話です。(発覚〜出産を決意するまでのお話はこちらをご覧ください)

出産予定日よりも2週間早い前駆陣痛
妊娠9ヶ月半ぐらいの時のことです。お腹の張りが収まらず通院していた妊娠中に切迫だと診断され、赤ちゃんの安全と私自身(母体)の安静のため点滴をしながら1ヶ月程入院していました。
出産予定日まであと3週間となった日、体調が回復した為退院手続きをしていました。退院手続きをしている間、まさかのおしるしが!「そろそろか…」と胸がギュッとなる思いでした。
家に帰宅してからは横になったり、産後の引越しのために軽く荷物をまとめたりと、ゆったりとした時間を過ごしていました。その間も赤ちゃんと過ごす日々や治療、手術のことなど色々な知識を入れること、赤ちゃんの手術をするのに適した病院を探すことに専念していました。
退院してから1週間が経ったある日、いきなりお腹の痛みが強くなり前駆陣痛が始まりました。前駆陣痛といっても横になっていればそれほどつらくは無い痛みでしたが、不安になり夜間に病院へ向かいました。
NSTを装着してすぐ痛みがどんどん強くなり、子宮口の開き具合を確認したりと本格的な陣痛に向けての準備が始まりました。
子宮口は1cm、看護婦さんに「まだまだだね〜」と言われ、夫は本格的な陣痛が始まるまでは帰宅してもらっているため、病院のベッドで1人で痛みに耐える時間がとても苦しかったのを今でも覚えています。
5分おきの痛みに耐えている時間も頭の中では
「産んだら5ヶ月後くらいに唇の手術をして。。」
「その後は上顎で。。」
「その後は、、」
と、産後の治療の段取りを頭の中でグルグルと考えていました。
赤ちゃんが動かない!?緊急事態発生
NSTを装着してから2時間程経った時、看護婦さんが確認しに来ました。
「お母さん、赤ちゃん動いてる?」という看護婦さんの言葉にハッとしました。
痛みに耐えながら、頭の中で産後のことを考えている間、赤ちゃんの胎動を感じていませんでした。
「赤ちゃん動いてないかもしれないです…」と伝えると、看護婦さんはすぐに先生に確認しに行きました。
看護婦さんが戻ってくるまでの間、痛みがあることも忘れ、ひたすらお腹を撫で、赤ちゃんに呼び掛けました。
「大丈夫???」
「ママだよ!!」
「返事して!!」
沢山沢山お腹に向かって声をかけました。
すると、看護婦さんが先生を連れて戻ってきました。
「赤ちゃん心配だから、帝王切開にしよう。お母さんも不安だよね。赤ちゃん出してあげよう」という先生の言葉に大きく頷き、緊急帝王切開が決まりました。
すぐに夫に連絡し、病院に来てもらい、背中に麻酔を刺して帝王切開の準備が始まりました。3名の先生と5人くらいの看護婦さんが私の周りで作業をしている中、急な事態に不安で胸がいっぱいで涙が止まりませんでした。。
緊急帝王切開で、出産へ
夫が手術室から退出してすぐ、帝王切開が始まりました。
"どうか無事であってくれ"という思いで赤ちゃんが出てくるのを待ちました。
痛みは無いけれど、お腹の中を触られている不思議な感覚とお腹の中だけ揺らされたり押されたりする感覚と極度の不安で、猛烈な吐き気が襲ってきました。
今思えば、貴重な体験だったのではとも思えますが、最中は吐き気に耐えることと赤ちゃんの安否で頭がいっぱいで、これから赤ちゃんに会えるという時間に感動している余裕などありませんでした。
帝王切開が始まってから体感的に15分程経った時「産まれるよー!!」という先生の声がして看護婦さんに首を持ち上げてもらい、お腹から赤ちゃんが出てくる瞬間を見ることが出来ました。
先生が持ち上げている赤ちゃんと天井の大きなライトが重なって、赤ちゃんが輝いているように見えて
「天使だ・・・」
と思ったのが、赤ちゃんとの初対面でした。
大きな産声をあげて産まれてきた赤ちゃん。すぐに小児科の先生に見てもらい、唇だけじゃなく、上顎も裂けていることが分かりました。
口唇裂だけの場合と口蓋裂も合併している場合では、手術の数や治療法などが大きく変わります。なので"口唇裂だけだったらいいな"と心配に思っていました。
でもそういった不安や心配は、実際に赤ちゃんが私の目の前で泣いている姿、顔を見た時にはもう吹き飛んでいったのです。
「可愛い!」
「産まれてきてくれた!」
「ありがとう!」
「大好き!!!」
色んな気持ちが溢れ、自然と涙が流れ、胸が苦しくなるくらい感動していました。
後に、先生から胎動が無くなった原因は『臍の緒が赤ちゃんの首に二重に巻きついていた』と聞きました。
赤ちゃんは首が締まり、脳に血液が行かず苦しい思いをしていて動けなかったらしく、看護婦さんの発見と先生の判断で無事に出産することが出来ましたが、もしそれが遅れていれば、脳に障害が残ってしまったり、最悪の場合、命を落としてしまうかもしれませんでした。
先生と看護婦さんには感謝しても感謝しきれない思いです。
産後すぐに、転院
私が「赤ちゃん触りたい」と言うと、看護婦さんが片腕だけ留め具を外してくれて、赤ちゃんを連れてきてくれました。
とっても小さくてふにゃふにゃな赤ちゃん。
赤紫色をした肌、小さな手、裂け目がある大きなお口を開けて一生懸命泣いてるその姿は今でも鮮明に記憶に残っています。
「とっても元気だけど、ちゃんとおっぱい飲めるか心配だから、赤ちゃん転院するね」と言われ、大きく頷きました。
口蓋裂をもって産まれてきた赤ちゃんは、鼻と口が繋がってしまっているため、吸啜反射(赤ちゃんが生まれ持っている吸う力)が無い、できない場合があり、口唇口蓋裂ベビー用の乳首を使います。それも使えない場合は点滴やホースなどて授乳や栄養補給を行わなければなりません。
しかし、私が出産した産院ではそういった設備が無い為、産院から車で10分程の所にある大学病院まで赤ちゃんだけ転院するかもしれないという説明を産前に伝えられていました。
出産してものの十数分で離れ離れになるのはとても寂しい思いもありましたが、その時には既に赤ちゃん第一という母性が働いていたのか、すぐに「よろしくお願いします!」と大きく頷いて返事をしていました。
帝王切開の傷口を塞ぎ、夫も赤ちゃんと対面しました。夫は涙を堪えたような顔をしながら赤ちゃんを見て
「頑張ったね」
「ありがとう」
と、私と赤ちゃんに言ってくれました。
赤ちゃんと対面してから搬送されるまでの間、夫は赤ちゃんに付きっきりで、『溺愛』という言葉がお似合いなくらいベッタリでした。
赤ちゃんを搬送する時に使う保護器に赤ちゃんを入れて手術室から赤ちゃんが出ていきました。
「「頑張ってねー!!すぐに会いに行くからねー!!!」」と沢山叫んで見送りました。
正しい知識が、メンタルを安定させる
出産するまでは「奇形児の赤ちゃんを可愛いと思えるか」「ちゃんと愛せるのか」沢山考えました。可愛いと思えなかったらどうしよう・・・とも思い、凄く不安でした。
でも、私たちの場合はそんなこと考えていたのが馬鹿らしい!!と思えてしまうくらい、産まれた瞬間から可愛くて仕方がありませんでした。
だからといって、今不安に思っている親御さんに『そんなこと絶対無いよ!』とは言えません。
口唇口蓋裂は生後5ヶ月程度で唇の手術をします。そして、今の技術は本当に素晴らしくて、1歳になる前にはもう傷口もあまり目立たなくなり、他人からも"鼻の下怪我しちゃったのかな?"と思われる程度の外見になります。
そして、私は出産するまでに沢山の知識や産後の治療の段取りなどを、しっかり知っておくことをおすすめします。なぜなら、知識があるのと無いのじゃ、その後の気持ちの持ちようも違うし、焦りの度合いも違います。
様々なパターンや治療法を知っていれば、病院や医療補助など、赤ちゃんのために親御さんが考えて選べるものが沢山あります。赤ちゃんに合った手術の時期や治療法を先生と話し合う時に、無知のままより知識がある方が説明の受け取り方も違います。
今はネットで沢山の情報を得られます。私は
"口唇口蓋裂の手術が上手い先生"
"口唇口蓋裂の種類"
"平均的な治療期間"
"口唇口蓋裂の医療補助金"など沢山調べました。
産後は本当にドタバタで携帯を触れるほど余裕のある時間はほとんどありません。出産を迎える前に親御さんには、赤ちゃんに出来ることを沢山知って知識を蓄えてほしいと思います。