詳しく知りたい麻酔分娩のあれこれ

2019年5月20日 更新 FAMILY
詳しく知りたい麻酔分娩のあれこれ

無痛分娩、気になってはいるけれどよくわからない。

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出産時の麻酔について調べてみると完全無痛、無痛、和痛など、出産で行われる麻酔方法っていろんなものがあって違いがよくわからない。と感じる人も多いのではないでしょうか。出産経験のある筆者も一人混乱した記憶があります。出産がどう進むのかわからない初産婦や、出産時に麻酔の使用経験がない人達には調べた内容を理解するには少し難しいようにも思います。

そこで、今回は筆者が経験した麻酔方法を踏まえ、お産の進み方や麻酔の効き方など妊婦の観点から実際に感じた感情とともにお伝え出来たらと思います。

表現で混乱?無痛分娩、和痛分娩とは?

筆者の通っていた東京都内の産院では麻酔を使った出産を勧めていたこともあり、そこで行われた母子教室では妊婦としては嬉しいことに麻酔医の方から直接説明を受け、質問することができました。その時に麻酔医の先生から受けた説明で一番に驚いたのは「当院では和痛分娩という表現は行っていない」といった説明でした。あくまで筆者の通っていた産院での話になってしまいますが「痛みを取る」ということを目標に行っている医療行為として考えていたので、和らげるのが目標としていない。という説明でした。(※和らげることを目標として行っている産院も有)筆者の通っていた産院では患者の混乱を避けるためかその後、和痛分娩という表現を耳にすることは無く、無痛分娩という説明のみでした。

硬膜外麻酔ってどうやるの?

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筆者が行った麻酔方法は硬膜外麻酔と呼ばれるものでした。事前に受けた説明では背骨にある脊椎の中の硬膜外腔というスペースに硬膜外カテーテルという細い管を入れ、そこから麻酔薬を入れるとのことでしたが医療に携わっていないので自身に置き換えて想像することはとても難しかったのを覚えています。

そんなあやふやな理解のなか迎えた当日ですが、別室にある診察台に横向きに寝そべり、膝を抱えるように丸まるように指導されググっと丸まると、背中に少し太めで長い注射針を刺されます。それと同時にカテーテルの管を入れ、テーピングにより固定されます。このときはまだ麻酔は行わずに一旦部屋に戻されます。普通の腕にする注射よりも痛みを感じなかったという人もいるのよ。と付き添いの看護婦さんは緊張を和ませてくれましたが、腕に受ける注射よりかは若干痛いと感じた記憶があります。また、実際に麻酔が入れられるまではカテーテルの為か背中を中心に違和感がありました。

どのタイミングで痛みを取ってくれるの?

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カテーテルの処置をしてもらったのにも関わらず部屋に戻されてしまい、すぐに麻酔の処置は行ってくれなかったのはなぜ…?と思う人もいるのではないでしょうか。部屋に戻された理由としてある程度、子宮口が開くまで待ち硬膜外麻酔の処置をすることで安定し陣痛が遠のいてしまうリスクを避けるとの理由によるものでした。

この子宮口の開き具合は産院によって多少の違いがありますが、筆者の通っていた産院では子宮口が3センチ開いたら麻酔薬を使えますと言われたので、そこまで頑張って耐えなければならないなと頑張れるラインでもありました。麻酔投与が許可されると分娩室の方へ移動します。硬膜外麻酔の投与はスイッチになっているので痛みを感じたら自身の判断で麻酔薬を投与することができるので、安心して休むことができました。

時間間隔で投与できる薬の量が機械によって設定されているため、一定量以上は投与できないように自動で管理されているので安心してスイッチを押すことができます。スイッチを押すと麻酔薬が背中の管をひんやりとたどり、痛みがすぅっと消えていったのを覚えています。痛みはお産が進むにつれどんどんと強くなるのでスイッチの回数は増えますが、麻酔が効いても意識には影響はなく足には感覚があるので、お腹、腰と子宮口付近の痛みのみが消えているといった不思議な感覚でした。

無痛分娩、本当に痛くないのか

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当たりまえではありますが「麻酔が効いているときは痛くない」が正解。日本では麻酔医の人数が不足しているため、お産で麻酔を希望するのであれば24時間麻酔医のいる態勢の整った産院を探すか、計画分娩という方法になります。ですが、実際のところ24時間麻酔医のいる産院はまだまだ少ないのが現状の為、大半は計画分娩という方法がとられているようです。計画無痛分娩といっても子宮口が開いてからという前提があったりするので大切なのは無痛分娩という言葉をそのまま鵜呑みにするのではなく、一人一人個人差がある出産には何が起こるかわからない予測不能なものと心の準備をしておくことが大切。

筆者自身、計画分娩として出産予定日より一週間ほど前に入院を予定していたのにも関わらず、入院日を待たずに自然に陣痛が始まってしまいました。結果的に麻酔を使えるようになる「子宮口3センチ」(※産院によって差があり)に到達するのに朝の6時から夜20時まで、14時間という長時間、少しずつ強くなる陣痛にひたすら耐えるという結果となりました。
無痛分娩じゃない…と子宮口が開くのを待っていた時は感じましたが、その後は麻酔のお陰で夜21時頃から休むこともでき集中して朝の出産に挑むことができたので、麻酔をしてよかったと感じました。

産後は、子宮の収縮による痛みと会陰切開の痛みなどは残念ながらつきものですが、ロキソニンなどの鎮痛剤を処方してくれます。産院によっては最初に麻酔の処置を行い、薬で陣痛を起こさせ、バルーンによって子宮口を開き出産するといった形をとるところも有るので、そういった方法だと筆者の感じた14時間の陣痛の間も痛みを感じずに出産できるようです。

しっかりと先生に相談して解消し信頼関係を築くこと

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医療の進んだ日本とはいえ、出産時において起こる母体死亡事故は残念なことにゼロではありません。そしてそれが硬膜外麻酔によるもので起きているのも事実です。出産は母親にとっても赤ちゃんにとっても文字通り命がけ。麻酔が効き安心して休んでいた筆者も赤ちゃんの心拍の低下によるアラームが鳴り、すぐさま先生と看護婦さん合わせて5,6人が部屋に流れ込んできたと思ったらそのまま分娩に入ると説明され、あれよあれよと腹部を押されながらの出産となりました。筆者は立ち合い出産を妊娠当初から希望していてそれだけは、と思っていましたが、10分後に到着する主人を待つことも叶いませんでした。

先生は「赤ちゃん、今苦しいみたいだからもう一人の先生がお腹を押して出産をお手伝いしますから、頑張って早く出してあげましょう」と穏やかに言ってくれましたが、看護婦さんやらの物々しい様子から、これは…もしかしたらただ事ではなくて赤ちゃん結構やばいのかも…ここまで来て赤ちゃん死んじゃったらどうしよう…。なんて泣きそうになるのを我慢しながら必死にいきんだのを覚えています。赤ちゃんの命、母体の命を優先しているからこそ全てが理想通りというわけには勿論いかないということを痛感しました。

生まれてくる新しい家族。心配や不安を母親が一人抱え込み自身で解決しようとして、できずにネガティブになるのではなく、心配事などがあるのであれば些細なことでもパートナーや担当医、麻酔医の先生に相談をすることでお互いの信頼関係を築くことは、のちにもし万が一の緊急的な処置が必要になったとしても安心して従い任せることができ、結果的にかけがえのない命を守ることにも繋がるのではと感じました。

日本で行われる無痛分娩数は圧倒的に低い割合

日本では古くから耐え忍ぶことが美徳とされ称されることがあります。そしてそれは世界的に高く評価されている部分であることも事実です。そんな考えから来るものかは定かでありませんが、出産において無痛分娩というといい印象ばかりではないことも確かです。

日本の総分娩数に占める無痛分娩数の割合は少しずつ増加傾向にあるとはいえ、28年度時点で6.1%であり、イギリス2012年では20.8%、アメリカ2008年では41.3%、フランス2016年では65.4%と、諸外国に比べ著しく低いことがわかっています。(この数値は厚生労働省のホームページより引用)(※平成30年4月11日 第61回社会保障審議会医療部会資料)

筆者も出産時に無痛分娩を利用することを考えていると周囲に話し始めた頃、お腹を痛めて産むことで子供に愛情が生まれる。これから始まる壮絶な子育てを耐えるにはまず出産の痛みぐらい耐えるべきだ。など、無痛分娩は出産に手を抜いていると否定的な言葉を耳にする機会が何度かありました。

はき違えた美徳観念から、自身の認識しか正しくないと考える人もいることは悲しいことではありますが、親になるからこそ、人は人、自分は自分と割り切って考え、出産するのは本人。そう考えるのも正解。違う考えが不正解なのではなく、違う考えも正解なのではないでしょうか。痛みや出産に対し不安に思うことは決して母親としての自覚が甘いわけでも、覚悟が足りないわけでもありません。不安や恐怖はあるのが当たり前。無痛分娩、自然分娩をどちらを選択しようとも優劣の差はなく、正解不正解もないのです。大切なのは愛おしい赤ちゃんを愛情持って迎えることなのだと思います。