“無痛分娩にはしたくなかった…” 痛いことつらいこと大嫌いな2児の母による出産体験記 〜長男編〜

2019年5月20日 更新 FAMILY
“無痛分娩にはしたくなかった…” 痛いことつらいこと大嫌いな2児の母による出産体験記 〜長男編〜

“痛い思いをして産んだ方が赤ちゃんをより可愛いと思える気がするんだよね”

 (130)

10年前、私が21歳の頃の今考えてみれば何の信憑性もない持論だ。当時の私は妊娠発覚をして急にママになる焦りからか“子供に全てを捧げるちゃんとしたママにならなきゃ”と必死だったのだと思う。今まで痛いことや辛いことから逃げてきたけれど、無痛分娩なんて逃げるようなことは絶対にするものか!と、頑なに心に誓っていた。

2018年 夏。

 (131)

待望の第一子の出産の日程が決まった。羊水が少なめなので40週ぴったりで出産した方がいいねと先生が言った。いよいよママになるんだというワクワクと、不安とプレッシャーで入り混じっていた。私は痛いことに関しては人の何倍も弱い。髪の毛をちょっと引っ張られただけでも泣きそうになるくらい弱い。そんな私でも痛いのを乗り越えて産んだ赤ちゃんはきっと、とんでもなく可愛いのだろう。イメトレと気合い十分で出産の日を迎えた。

これか、陣痛って。

バルーンで子宮口をひらき、促進剤を投与されて陣痛が来るのを待つ。とにかく怖かった。痛さの想像がつかなかった。私が寝泊まりする部屋のベッドで何の気なしにゴロゴロする旦那に無性にイライラした。怖さのあまりピリピリしていたのだと思う。座りたいからそこどいて!と旦那をどかし座った瞬間、パンッ!!!!とー破裂音がした。子宮口を開くためのバルーンが中で破裂したのだ。焦った私が助産師さんを呼ぼうとしたその時、急な激痛が全身にはしり陣痛が始まった。

嫌だ!無痛にはしないで!!!

 (132)

助産師さんがきて声をかけてくれる。私の叫び声に負けないくらいの声でなだめてくれているけれど、私に落ち着いて聞ける余裕はなかった。泣きながらいたいーいたいーしか言わない私に駆けつけた先生が言う。『今から無痛に切り替えようか?』この人はなんてことを言うんだと思った。

私は痛くても我慢して可愛い赤ちゃんを産んで、この先辛いことがあっても“あれだけ痛い思いして産んだ子供”というのを心の支えにして育児をしたいんだ。どんなことがあっても痛かった出産を思い出して乗り越えていきたいんだ。私はベッドの上で悶えながら『嫌だ!無痛にはしない!』と先生に叫んだ。絶対に嫌だった。

これだけは“ちゃんと”したかった。

母として“ちゃんと”するということ。

『おかあさん、まだ陣痛も序盤でこれだけ身体に力が入ってるとね、赤ちゃん苦しがってるから…』先生の言葉になんだか身体がふわっとする感覚を覚えた。あぁ、私だめだ。母としてだめだ。そう思った。“痛い思いをして産んだ方が赤ちゃんをより可愛いと思える気がするんだよね”と友人にヘラヘラ話していた数ヶ月前の自分を責めた。

結局は自分のことしか考えていなかった。自分が育児で辛い時気持ちが楽になるように、都合のいい理由をつけたかっただけだ。痛く産んだから何なんだろう?痛くないから愛情がうすいのか?違う。今母として出来ることは苦しがっている我が子を守ることだ。

我にかえった私は先生の言葉にうなずき、もがきながらも背中から麻酔をしてもらった。すると本当に一切痛みがなくなりお腹の張りを示す波型の線だけが上下に動いていた。

今ですか?どうやっていきむの?

 (133)

痛みがなくなってから、昨晩緊張して寝れなかった私はぐっすり眠った。目を覚ますとさっきまで小さかった波型の線が等間隔で縦に大きく刻まれていた。助産師さんが来る。『 そろそろ頭が下まできてるからね!』いよいよ出産が近づいてきた。全く痛くない私は、冷静に返事をして待つ。

先生が来て、『じゃあいきんでー!』と言われるがいきむ力の入れ加減がわからない。今?今ですか?こうですか?と伺いながらいきむ私に先生が『真剣にやって!!!』と一喝。初産の無痛だとわからないよと思いつつも、また無駄に我が子を苦しめた自分を責めたりもした。

母になる。そして今の私。

 (134)

頭を吸引されててやっと長男が誕生した。新生児室に並べられた我が子はどの赤ちゃんよりも頭が長くなっていたけど可愛かった。痛くはなかったけど可愛かった。私は考えすぎていたんだと思う。いい母親にならなきゃいけないと思いすぎてアクセル全開で違う方向に進んでしまっていたんだと思う。“ちゃんとした母親”ってこうしたら正解とかではなくて、今目の前にいる我が子を守ることなのではないか。出産を経て私はやっと母になれたなと感じた。

無痛分娩は賛否両論あるけれど、人それぞれのベストな方法で出産するのが一番だと私は思う。どんな方法でも我が子は一番可愛い。それだけは例外なく共通して言えることなのではないか。私はこれからも目の前にいる子どもたちを支え、守れる母親でありたいと思う。